第11章 隠れて泣いちゃいました
『歌仙…わたし…
今日、嫌なことばっかりあって』
思い出すとまた胸が熱くなって、
頑張って止めていたはずの涙が零れてくる。
『生きてるのが、
ちょっとツラくなっちゃった。』
「主…」
『情けないよね…
泣いてる姿なんて誰にも見せたくなかった。』
不意に後ろから抱きしめられる。
『歌仙…?』
「たまにはこういうのも悪くないだろう?」
『ふふっ、なにそれ。』
歌仙から伝わる体温は温かくて、
安心する。
何をするでもなく、
静かな時間が流れていく。
「少しは、落ち着いたかい?」
歌仙の言葉にこくりと頷く。
『ねぇ、歌仙。ありがと…』
なんだか恥ずかしくなって、
お菓子に手をつける。
『これ、美味しい…!』
「ああ、これはね …」
いつものお菓子の話が始まる。
私はいつもの光景にほっとしながら、
歌仙の声に耳を傾けた。