第8章 美しい人
「小狐丸。何をしているのだ。」
『え、三日月さん…?』
三日月さんの少し怒ったような、
焦っているような声に、
頭の中に疑問符が浮かぶ。
「見ての通り、
ぬしさまを口説いていたところです。」
「そうか、では出遅れてしまったか。
主、俺も主が好きだ。
他の者のところへなど、行かないでくれ。」
三日月さんの目が私を捕らえて離さない。
『私も…三日月さんのこと、好きです。』
三日月さんが私の涙を拭って、
優しく強く抱きしめてくれた。
抱きしめ返そうとすると、
後ろから肩を掴まれ力強く抱き寄せられる。
『わっ』
「ぬしさま、私のことはどうなのですか?」
『うん…?
小狐丸のこと、好きだよ?』
「俺の邪魔をするというのか、小狐丸よ。」
「はて、なんのことですか…?」
この後、
私は二振りにさんざん振り回された。
幸せだなぁ。
ねぇ、三日月さん
次こそ現世で一緒に色々しませんか。
恋人っぽいこと、してみたいんです。
なんてね。