第10章 バトル勃発、始まる奇妙な関係
(今日は忙しかったなぁ…)
梅雨も明け、季節は夏本番。
今日はアルバイトの可南子ちゃんがお休みの日だった事もあり、お店は大忙しだった。
着替えを済ませ、いつも通り私を待ってくれている皐月くんの元へ急ぐ。
「皐月くん、お待たせ…」
お店の裏口から出てそう声を掛けた瞬間…
「…!」
私は言葉を失い、ぴしりとその場に固まった。
何故ならそこにリアンくんの姿があったからだ。
「リアンくん…、」
「…久しぶり」
そう言う彼に会うのは1ヶ月ぶりだった。
彼と体を重ねた、あの夜以来…
「…アンタに話があって待ってた」
「……、」
けれどリアンくんの隣には皐月くんもいる。
無意識に彼の方へ視線を向けると、予想外にも皐月くんの方が口を開いた。
「俺も…ちょうどあなたに話したい事があったんです」
「…は?」
皐月くんがそう言った相手はリアンくんで。
突然の事にリアンくんも顔を顰めている。
「…何」
「ここじゃ何ですから移動しませんか?…桜子さんも」
「……、」
皐月くんの顔はひどく真剣だ。
一体何を言うつもりなんだろう…
私たちは言われるがままその場を後にし、近所の公園まで歩いて移動した…
「…で?話って何」
誰もいない公園。
ベンチに腰を下ろしたリアンくんは、脚を組んで不機嫌そうに言う。
「単刀直入に言います。俺…桜子さんの事が好きです」
「っ…」
何の躊躇いもなくそう告げた皐月くん。
隣に立っていた私はゴクリと息を呑んだ。
「…それで?」
「以前俺に言いましたよね?…桜子さんは自分のモノだって」
「言ったけど」
「納得出来ません…俺は桜子さんを誰にも渡したくない」
「………」
(…皐月くん……)
しばらく無言で睨み合う2人。
何か言わなければと思うのに、頭が真っ白になって言葉が出てこない。
そうして先に沈黙を破ったのはリアンくんの方だった。
「悪いけど…アンタが俺とこの人の間に入り込める隙なんてねーから」
「どうしてですか?」
「俺たちもうセックスした仲だし」
「っ…」
ストレートにそう言うリアンくん。
私はその場から逃げ出したい衝動に駆られた。
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