第9章 酒は飲んでも呑まれるな
我慢出来ずに溢れてきた先走りの液が桜子さんの指を濡らす。
けれど彼女は手の動きを止めず、ぬるぬると自身の先端を刺激し続けた。
(ダメだ……、もう…ッ…)
このままでは彼女の手を汚してしまう。
一旦止めてもらおうとその手を掴んだ瞬間、彼女が突然唇を重ねてきた。
驚いて口を開いた拍子に入ってきた熱い舌。
いつもとは違い、自分から積極的に絡めてくる。
(今そんな事されたら…)
「んッ…、」
俺は彼女からのキスに応えながら、何度も腰を震わせ呆気なく達してしまった。
それに気付いた彼女がゆっくり唇を離す。
「…気持ち良かった?」
「ッ…」
上目遣いでそんな事を言われ、今出したばかりなのにまた疼き始める自身。
その衝動に任せて彼女をメチャクチャにしてしまいたかったが、何とかグッと堪える。
俺は汚してしまった彼女の手を綺麗にし、その体をそっと抱き寄せた。
「ありがとうございます…すごく気持ち良かったです」
「…皐月くん……」
「本当はこのまま桜子さんを押し倒したいくらい…」
「っ…」
びくりと彼女の体が跳ねる。
「冗談です」と笑いながら告げると、彼女はホッとしたように肩を落とした。
(今はまだ…もう少しこのままで……)
*side 桜子*
「それじゃあ桜子さん…おやすみなさい」
「うん…気を付けて帰ってね」
時刻はすでに午前1時。
玄関先で皐月くんを見送った後、私はドアを閉めてズルズルとその場にしゃがみ込んだ。
(…何やってるの私)
酔った勢いに任せてまたとんでもない事を…
そう自己嫌悪する。
どうして皐月くんとああいう事をする経緯になったのか記憶は曖昧だが、途中からはハッキリ覚えていて…
(自分からあんな事言っちゃうなんて最悪…)
あんな事とは勿論、彼に奉仕した事だ。
私は一体いつからこんな厭らしい女になってしまったんだろう…
「ハァ…」
いい加減この関係にも終止符を打たなくてはいけない。
頭では解っている…けれど本人を前にすると、私はいつもその場の空気に流されてしまって…
(もう…どうすればいいの……?)
しかしそれから数週間後…
今のこの関係が壊れてしまうなんて、その時の私は知る由も無かった…
*