第8章 越えた一線
「…ん……」
枕元に置いてあった携帯のアラーム音で目が覚める。
窓の外はすっかり明るくなっていて…
(もう朝か…)
気怠い体を起こすと、自分が何も身に付けていない事に気付いた。
「…!」
(そうだ…昨日私は……)
そこでようやく昨夜の事を思い出す。
リアンくんと体を重ねてしまった事を…
「…あれ……?」
けれど彼の姿はどこにも無い。
ひょっとしてもう帰ってしまったのだろうか…
上着を羽織り、痛む腰を庇いながらベッドを下りる。
するとテーブルの上に置き手紙がある事に気付いた。
綺麗な文字で書かれた手紙…リアンくんからだ。
*
おはよう。
ホントはアンタが起きるまで一緒にいたかったけど、親父にバレたら面倒だし、明るくなる前に帰る。
またしばらく会いに行けないけど、必ず連絡するから待っててほしい。
それじゃまた。
P.S.
昨日のアンタ、可愛くて最高だった。
次会った時は覚悟しといて。
*
「…リアンくん……」
その文面から彼の気持ちが伝わってくる。
私は彼とどうなりたいんだろう…
出会ったばかりの頃…彼に『俺を恋人にしてほしい』と言われたが、私はまだその返事をしていない。
昨日はあんなに激しく求め合ってしまったけれど…
(正直まだ揺れてる…)
彼に惹かれているのは認めるが、彼の家の事とか将来の事を冷静に考えると、今すぐ答えを出す事は出来ない。
(ハァ…私ってダメな女)
リアンくんはそれを含め、色々考えた上で私を好きだと言ってくれているのに…
その夜仕事を終えて家に帰ると、二階堂さんから電話があった。
『相沢様にお願いして正解でした。今後ともリアン様をどうか宜しくお願い致します』と…
昨日まで荒れていた彼も吹っ切れたのか、普段の調子に戻ったらしい。
それはそれで良かったのだけれど…
『肌艶も良く、いつも以上に輝かれておりました…これも相沢様のお陰ですね』
そんな事を言われ、私はただ赤面するしかなかった…
(絶対バレてる…!)
*