第7章 揺れる心
『…やはりそうでしたか』
私の返事を聞いた二階堂さんは妙に納得しているようだった。
『今日お電話させて頂いたのは、相沢様にお願いがあったからなのです』
「お願い…ですか?」
『はい…。使用人の私が口を挟むなど、差し出がましい事だと重々承知なのですが…どうか聞いて頂けないでしょうか?』
「……、」
そんな風にお願いされては無下にも出来ない。
私はとりあえず話だけでも聞いてみようと先を促した。
『実は…リアン様の様子がおかしいのです』
「…おかしい?」
『はい…。先日旦那様に呼ばれて1日だけご実家に戻られたのですが…どうやらその時旦那様と口論されたようで…それ以来ずっと…』
「おかしいって…」
『常に苛々していたり…最近では何に対しても自棄になっていると申しますか…。私が理由を伺っても「何でもない」の一点張りでして…』
「……、」
私の家に来た時悲しそうな顔をしていたのは、お父さんと喧嘩をしたから…?
『図々しいのは承知でお願いがあります。どうか…リアン様に会ってお話だけでもして頂けないでしょうか?』
「……、でも…私も避けられているというか…。最後に会った時彼の様子がおかしかったので、心配でメールしてみたんですけど…彼からの返信は無くて…」
それに…数日前駅で見かけた時、彼は楽しそうに女の子と歩いていた。
もう私なんか必要無いんじゃないだろうか…
「あの…リアンくんに彼女がいるっていう事は……」
『…それは無いと思います。少なくとも私が知る限り、リアン様のご自宅へいらっしゃるような間柄の方は相沢様以外存じ上げません』
「……、」
それじゃあ、あの女の子はただの友達…?
それとも二階堂さんが知らないだけで、やっぱりリアンくんの彼女なのかな…
(もう頭の中ぐちゃぐちゃ…)
リアンくんの事は忘れようって決心したばかりなのに、そんな話を聞かされては気になって仕方がない。
「…分かりました。今度の休日、彼に会ってみます」
やっぱり私もモヤモヤしたままなのは嫌だし…
それに何より、彼の事がすごく心配になってきた。
『本当ですか?…ありがとうございます』
私の言葉を聞いて、二階堂さんの声のトーンがようやく上がる。
私は彼に告げた通り、次の休日リアンくんの元を訪れてみる事にした…
*