第4章 まるで飼い主とペット
「えっ…、可南子ちゃんが!?」
ストーカーの一件があってから数日後…
お店へ行くと、叔父さんから衝撃的な話を聞かされた。
なんと、アルバイトの可南子ちゃんが事故に遭ってしまったというのだ。
「それで可南子ちゃんは大丈夫なの!?」
「ああ…幸い命に別状は無いみたいなんだ。ただ右足首を骨折してしまったらしくてね…2週間程入院するそうだよ」
「そっか…」
手放しに喜べはしないが、骨折だけで済んだのは不幸中の幸いだろう。
叔父さんいわく、連絡をしてきた可南子ちゃんの声は元気そうだったようで少し安心した。
「しかし困ったなぁ…。うちのスタッフは桜子ちゃんと可南子ちゃんだけだろう?例え退院しても、彼女はしばらく店に出て来られないだろうし、どうしたもんか…」
「アルバイト募集するの?」
「そうだな…短期ならすぐに見つかるかもしれないし…」
私と叔父さんがそんなやり取りをしている時だった。
カランカランと入り口のドアベルが音を鳴らす。
「すみません、まだ準備中で…」
そう言いながら入り口の方へ向かうと、そこには見覚えのある人物が立っていた。
「あなたは…」
「お忙しいところすみません」
申し訳なさそうに頭を下げるその人物は、以前叔父さんがパンクした自転車のタイヤを応急処置してあげた彼で。
(確か名前は……神浦皐月くん…だっけ?)
「遅くなってしまったんですが、この間のお礼をさせて頂きたくて…」
そう言う彼の手には菓子折りの包みがある。
わざわざ買ってきてくれたのだろうか。
「ああ、君か。そんな事気にしなくても良かったのに…。却って気を遣わせてしまったみたいで悪いね」
「いえ、そんな…」
「ちょうどいい、今時間はあるかい?」
「え…、ええ。今日は午前中休講なので…」
どうやら彼は大学生のようだ。
叔父さんは彼を椅子に座らせるとコーヒーを飲んでいくよう促した。
「あの…でもお忙しいんじゃ……」
「開店までまだ1時間あるから平気だよ。せっかくだからうちの自慢のコーヒーを飲んでいってくれないか」
「あ、ありがとうございます!」
そう言って彼は屈託のない笑みを見せる。
見た目も物腰も落ち着いているので勝手に同い年くらいかと思っていたが、その笑顔にはどこかあどけなさが残っていた。
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