第24章 時にはお酒の力を借りて
「ハァ…」
いつものように仕事から帰ってきて溜め息をひとつ。
ここ1週間確実に溜め息の量が増えている。
リアンくんに合鍵を貰った、あの日から…
(これからどうしよう…)
彼に合鍵を貰った事自体は本当に嬉しかった。
それだけ私の事を信用してくれている証拠だし、私の事を想ってくれているからだろう。
でも…
(私にこの鍵を使う資格なんかあるの…?)
最近そんな事ばかり考えてしまう。
リアンくんも皐月くんも、『自分といる時は自分の事を考えてくれればそれでいい』なんて言ってくれているけれど。
私はいつまで2人の優しさに甘えるんだろう…
「あぁもう、やめやめ!」
リアンくんがせっかくくれたのに、私がこんな事ばかり考えてたらダメだよね。
彼の厚意は素直に受け取らなくちゃ…
私は自分自身にそう言い聞かせ、キッチン棚に仕舞っておいた酒瓶を取り出した。
それは年明けに美鈴から送られてきたもので。
お正月休みに彼氏と旅行をしたという彼女からのお土産だった。
お酒に強くない私でも飲みやすい物を選んでくれたらしい。
(明日は仕事も休みだし…たまには飲んではっちゃけようかな)
…1人飲みだけど。
*side 皐月*
(桜子さんどうしたんだろう…)
最近桜子さんの様子が少し変だ。
元気がないという訳ではないが、時々何か思い悩んでいるような顔をしている。
また俺とリアンさんの事で悩んでいるのだろうか?
それともリアンさんと何かあったとか…?
今日もバイトが終わってから桜子さんを家まで送ったが、その時彼女から悩みの種を聞き出す事は出来なかった。
そして俺はそれを後悔している。
(やっぱり聞けば良かった…)
何か悩んでいるなら俺に話してほしい。
俺とリアンさんの事で悩んでいるなら尚更だ。
(電話…してみようかな)
桜子さんの事を考えていたら、無性にその声が聞きたくなってしまった。
ついさっき別れたばかりだけれど。
「………」
結局俺はスマホを手に取り彼女に電話を掛けた。
数コール後その音が止み、愛しい彼女の声が聞こえてくる。
「あっ、桜子さん…?急に電話なんかしちゃってすみません。俺…」
『…さちゅきくん?』
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