第23章 甘え上手な恋人
(勝手に来て良かったのかな…)
私は今リアンくんのマンションにいる……それも1人で。
今日イギリスから帰国予定の彼。
当然その事は彼本人からも聞いていたが、今朝二階堂さんから改めて連絡があったのだ。
私さえ良ければ、リアンくんの帰りを彼の部屋で待っていてあげてくれないかと…
イギリスにいたこの2週間、リアンくんは相当なストレスを溜め込んでいたらしく(何となく想像はつく)、それを癒してあげてほしいというのが二階堂さんからのお願いだった。
私はこの部屋の鍵など持っていなかったが、二階堂さんが予めコンシェルジュの人に連絡をしておいてくれたお陰であっさり通してもらえた。
そんなこんなで今日仕事が休みだった私は昼過ぎにここを訪れ、夕飯とお風呂の支度をして今に至る。
(そろそろ帰ってくる頃かな…)
空港に着くのは17時と言っていたので、彼が寄り道をしていなければもうすぐ帰ってくるだろう。
何だか少し緊張してきた。
怒られたりはしないだろうが、二階堂さんからお願いされたとはいえ黙って部屋に入る事自体はやはり後ろめたい。
そんな事を考えていると、玄関の方から物音が聞こえてきた。
もしかしなくてもリアンくんだろう。
「お、おかえりなさい」
「…!」
そこにいたのはやはりリアンくんで。
当然私の姿を見た彼はひどく驚いている。
「アンタ…どうして……」
「勝手に入ってごめんね…?その…今朝二階堂さんから連絡があって…」
「………」
正直にそう告げると、彼は全てを理解したようだった。
「アイツ…」と言って小さく溜め息をついている。
「お、怒った…?」
「…怒る訳ねーだろ」
「ゎっ…」
荷物を床に放った彼に腕を引かれ、ぎゅうっと力強く抱き締められた。
「…会いたかった」
「リアンくん…」
今日は珍しくビシッとスーツを着ている彼だったが、心なしかその体は少し細くなったような気がする。
これも二階堂さんが言っていたストレスのせいなのだろうか…
「お疲れ様…リアンくん、少し痩せた?」
「…かもな。あんま食欲無くて」
「もぅ…ご飯はちゃんと食べなきゃ」
「今からアンタの事食うからいい」
「…え……」
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