第17章 文化祭へ行こう
彼とそんなやり取りをしていると、不意に美鈴が私の名前を呼ぶ。
「ねぇ…めっちゃこっち見てるけど。あんたの彼氏」
「えっ…」
言われて皐月くんの方へ視線を戻せば、バッチリ彼と目が合ってしまった。
そして驚いたような顔でこちらへ駆け寄ってくる。
「桜子さん!?どうしてここに…」
「さ、皐月くん…」
「三上!悪いけど俺、休憩に出てくる!」
執事役の彼(三上くんというらしい)にそう告げた皐月くんは、私の腕を掴み部屋の出口へと向かった。
「ちょっ…皐月くん!?」
彼に腕を引かれながら後ろを振り返ると、美鈴と三上くんはひらひらとこちらに手を振っていて。
そんな彼らに見送られるようにして、私は皐月くんに構外へと連れ出された。
「いきなりすみません…こんな所に連れてきてしまって…」
そう言う彼に連れてこられたのは全くと言っていい程人気の無い場所。
私も彼も、早歩きしたせいで乱れてしまった呼吸を整える。
「いいの…?お店抜け出しちゃって…」
「元々俺はただの助っ人ですし構いませんよ。それより、どうして桜子さんがここに…」
「それは…」
少し躊躇ったが、私は正直に全てを打ち明けた。
皐月くんの態度が気になってこっそり文化祭へ来た事。
彼の参加する模擬店へ辿り着いたのは偶然だった事。
「そうだったんですか…」
「でも…どうして話してくれなかったの?別に隠すような事じゃないのに…」
「……、」
「まぁ…女の子たちにはすっごく人気だったみたいだけど?」
わざと意地の悪い事を言うと、彼はあからさまに慌てたような素振りを見せる。
「あ、あれはそういうんじゃ…!」
「…私が来ない方が良かった?女の子たちとのお喋り邪魔しちゃったし」
「桜子さん!」
不意に私の両手を握り締める彼。
その表情も声も怒っているようだった。
「本気で言ってるなら、俺怒りますよ?」
「ご、ごめん…冗談」
「ハァ…」
私の言葉を聞いた彼は大きな溜め息をつく。
「模擬店に参加する事を黙ってたのは謝ります。でもそれには理由があって…」
「…理由?」
「桜子さんの事…あまり知られたくなかったというか…」
「…?」
一体どういう意味だろう。
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