第17章 文化祭へ行こう
「…執事喫茶?」
声を掛けてきた男の子がくれたチラシにはそう書かれていた。
「綺麗なお姉様方には特別サービスさせて頂きますよ?」
「ふふっ、口が上手いんだから。でもせっかくだし…桜子、行ってみない?」
「うーん…」
「歩き回って疲れちゃったしさ、ひと休みしよ?」
「それでは私がご案内致します」
そう言う彼に連れられ構内の奥へと歩を進める。
突き当たりにある部屋の前まで来ると、彼は足を止めこちらを振り返った。
「只今30分待ちとなっておりますが、お姉様方は特別にすぐご案内させて頂きますね」
「ホント?ラッキー」
「い、いいのかな…?みんなちゃんと並んでるみたいだけど…」
入口にはざっと見ただけでも20人程の女の子たちが並んでいる。
チラシなど配らなくても十分繁盛しているようだ。
「彼女たちはここの学生なんですよ。この時間は外部の方を優先させて頂いているので」
「そうなんだ…」
「どうぞ、こちらです」
案内されるまま部屋の中へ入ると、中は教室とは思えない本当の喫茶店のようだった。
「へぇ…学園祭とはいえ、内装もちゃんとしてるんだね」
「はい。この模擬店を手伝ってくれたヤツが喫茶店でアルバイトしてるって言うんで色々協力してもらったんです」
感心する美鈴の言葉にそう返す彼。
そう言う彼は、「ほら、アイツですよ」と部屋の奧で接客をしている子に視線を向けた。
「うわぁ…すごい人気。女の子に囲まれてるじゃん」
「ははっ、そうなんですよ。アイツ目当ての女の子が多くて…男としてはちょっと悔しいけど、おかげで繁盛してるんで助かってます」
そんなやり取りをする美鈴と執事役の彼。
というか…
(…皐月くん!?)
一瞬目を疑ったが、今まさに話の的になっている"彼"はどう見ても皐月くんだった。
同じく執事姿に普段は掛けていない眼鏡を掛けているが、あれはどう見ても彼だ。
(皐月くんが隠してたのってこの事だったの…?)
彼は特にサークルなどには入っていないと言っていたので、恐らくこの模擬店にも助っ人として参加しているのだろう。
でも別に隠すような事ではないと思うのだけれど…
「…桜子?どうかした?」
「えっ…」
黙ってしまった私を不思議に思ったのか、美鈴がそう声を掛けてきた。
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