第17章 文化祭へ行こう
「そう言えば、M大の文化祭ってそろそろじゃなかった?」
仕事が終わった帰り道…
いつものように私を送ってくれる皐月くんにそう尋ねてみた。
彼は私の出身大学でもあるM大の在学生。
文化祭はいつも10月の半ばに行われていたはずだけれど…
「あー…、そうですね…」
「…?」
珍しく歯切れの悪い彼。
あまり触れられたくない話題だったのだろうか?
「皐月くんは模擬店に参加したりしないの?」
「は、はい……俺は別に…」
そう言う彼の目は明らかに泳いでいる。
…絶対嘘だよね?
(皐月くん…何か隠してる?)
「そ、それじゃあおやすみなさい!」
もう少し問い詰めようとしたが丁度その時アパートに着いてしまい、彼は足早に立ち去っていった。
(なんか怪しい…)
皐月くんがあんな態度をとる事はまず無い。
余程私に隠したい事があるのだろうか…
(うーん…気になるなぁ……)
*
「へぇ~、ここが桜子の通ってた大学かぁ」
M大の文化祭当日。
結局あれ以来、皐月くんの妙な態度の原因を聞けずにいた私は、彼に内緒でこっそり文化祭へ来ていた……親友の美鈴を引き連れて。
「結構盛り上がってるみたいだね~」
「うん…」
「桜子の彼氏くん見られるなんてすっごく楽しみ」
「会えるかどうかは分からないってば」
そもそも彼が模擬店に参加してるかどうかも分からないし…
「なーに言ってんの。会えなかったら電話でもして呼び出せばいいじゃん」
「で、でも…今日は内緒で来ちゃったし…」
「彼女が遊びに来てくれて嬉しくない彼氏なんている訳ないでしょ?いるとすれば…」
「…すれば?」
「うーん…実はあんたの知らない所で浮気してるとか」
「なっ…」
「冗談だってば、いちいち真に受けないの。桜子ってばホントに真面目なんだから」
「………」
(そうだよね…皐月くんに限って浮気なんかするはずない…)
それはこの間の件(彼と紫さんの)でよく解っている。
けれど…
それじゃあ彼は本当に何を隠しているんだろう…
「そこのお姉さま方、是非うちのお店に寄っていって頂けませんか?」
「…?」
美鈴と色んなお店を見て回っていると、執事のような格好をした男の子に声を掛けられた。
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