第15章 金髪イケメンの正体
窓の外へ視線を向けたまま話すジョエルさんは淋しそうに笑っていた。
以前リアンくんも似たような事を言っていた気がする。
お父さんは愛人だった彼のお母さんの方を愛していたからこそ、その息子であるリアンくんを縛り付けるのだと。
ジョエルさんもずっとそう感じていたのだろうか?
「私は幼い頃から厳しく躾けられました。勿論反抗した事もありましたが…家の長男として生まれてしまった以上、これはもう変えられない運命なんだと途中で諦めたのです」
「………」
「確かにお金や生活に困った事はありませんし、端から見れば贅沢な悩みなのかもしれません。…でも私にはずっと『自由』というものが無かった。だから…家を出て好きな事をしている弟が時々羨ましくなるんです」
「ジョエルさん…」
「それに…こんな素敵な女性が恋人なんですからね」
「……、」
その言葉に恥ずかしくなってつい俯いてしまう。
「つまらない話をしてしまってすみません」
「い、いえ…」
「桜子さん、飲み物のお代わりはいかがですか?」
「あ、はい…それじゃあ同じ物を…」
それから食事を終えた私たちだったが、ジョエルさんはお酒を…私はジュースを飲みながらしばらく話を続けた。
こうしてちゃんと話してみると、少しずつ彼の事が解ってくる。
私の中で彼の印象は大きく変わっていた。
(ジョエルさん…ホントはすごくイイ人なのかも)
…そんな風に思う程に。
(…あ、あれ……)
レストランを出て少し歩いた所で、突然眩暈に似た感覚に襲われる。
「桜子さん、大丈夫ですか?」
「す、すみません…大丈夫です」
ジョエルさんにそう言ったものの、足元はふらつき真っ直ぐ歩く事も出来ない。
(お酒も飲んでないのにどうして…?)
「桜子さんは本当にお酒に弱いんですね」
「…え……?」
「貴女はジュースだと思って飲まれていたようですが…あれは歴としたカクテルです。別名『レディーキラー』と呼ばれている、ね」
「っ…」
どうしてそんな物…
そう問いたかったが、意識は朦朧とし今度は激しい睡魔に襲われる。
「桜子さん、ダメですよ?簡単に男を信用しては」
「………」
耳元で囁かれたその言葉を聞いたのを最後に、私の意識は暗い闇の中へ落ちていった…
*