第15章 金髪イケメンの正体
「こんにちは」
「…あ、あなたは……」
気が付けば9月も中旬…
いつものように店の前の植木鉢に水をやっていると、見覚えのある男性に声を掛けられた。
私が以前、誤ってスーツに水を掛けてしまった"彼"だ。
「こ、この間は本当にすみませんでした!」
「いいえ…そんな事もう気にしないで下さい」
そう言って優しく微笑む彼。
『紳士』という言葉は彼のような人の為にあるのだろうと改めて思う。
「あの…今日は…?」
「はい…遅くなってしまいましたが…約束通り、貴女をお食事に誘いに来たんです」
「……え?」
「ふふっ、もう忘れてしまいましたか?」
「……、」
…いや、覚えている。
私が水を掛けてしまったお詫びをしようとしたところ、彼が『今度食事に誘わせてほしい』と言ってきたのだ。
当然あの時は冗談だと思っていたのだけれど…
「す、すみません…それは…」
「…ダメですか?」
「あの…今更ですけど……クリーニング代が必要でしたら、お支払いしますので…」
「そんなもの必要ありませんよ」
「ですが…」
「私は純粋に…貴女をデートに誘っているんです」
「っ…」
素敵過ぎる笑顔でそんな事を言われる。
それなら尚更その誘いを受ける事は出来ない。
「ほ、本当に困ります…。デートのお誘いなら…何も私じゃなくても…」
「いえ…貴女だから誘っているんですよ?」
「…え……?」
「私の弟がずいぶんお世話になっているようですからね」
「……、」
弟…?
その言葉に、何となくだが嫌な予感を覚える。
まさかとは思うが…
「弟の…"リアン"がね」
「…!」
嫌な予感は的中した。
初めて見た時…一瞬彼がリアンくんに似ていると思ったのは気のせいなどではなかったのだ。
「私は弟の交遊関係などに興味はありませんが…父が知ったら驚くでしょうね」
「っ…」
「まぁ…"ただの友人"なら文句も言わないでしょうけれど」
「………」
この人はどこまで知っているんだろう…私とリアンくんの関係を。
その口振りからすると、ただの友人ではないと勘づいているようだが…
「そんな顔をしないで下さい。私は別に父に告げ口するつもりはありません」
「……、」
「私とデート…して頂けますね?」
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