第13章 小悪魔の誘惑
(…どうしよう)
リアンくんとのデート当日。
私はまだメイクも着替えも出来ていなかった。
先日買った下着をつけていくかどうか悩んでいたからだ。
――今度はキスだけじゃ済まさないから、俺好みの下着でも用意しとけよ?
先日彼からそう言われた事を思い出す。
あの言葉は本気なのだろうか…
例えそうだとしても…
(こんなの着て行ったら、やっぱりやる気満々だと思われるかな…)
かと言ってそこそこ値段もした物だし、このまま箪笥の肥やしにするのは勿体ない。
それに意識しているのは自分だけで、男の人は意外と下着なんてそこまで気にしていないかも…
「…よし」
そう思い直した私は、結局買ったばかりのその下着を身に着け、急いで準備をした後リアンくんとの待ち合わせ場所へ向かった…
「うち…寄ってって」
リアンくんと映画館へ行き、その後ショッピングを楽しんで、ディナーを済ませて…
そろそろ帰ろうというところで、彼に家へ寄っていくよう誘われた。
断る理由も無い私は勿論それに頷いたのだが…
「部屋まで来たって事は…覚悟出来てる?」
「……、」
「…今日は帰さねーから」
「んっ…」
玄関先にも関わらず、チュッと触れるだけのキスをしてくる彼。
「シャワー浴びてくるから、部屋で待ってて」と私に告げ、バスルームへ消えていった。
こうなる事は予想していたが、いざとなるとやはり緊張する。
私は期待と不安の間で揺れながら、彼が戻ってくるのを部屋で待った…
「シャワーありがとう…」
リアンくんと入れ替わるようにシャワーを浴びた私は、借りたバスタオルを体に巻き付け彼の元へ戻る。
勿論タオルの下には例の下着を身に着けて…
「…こっち来て」
「ぁっ…」
腕を引かれたかと思えば、そのままベッドの上に押し倒された。
そしてすぐに唇を奪われる。
「んっ、ぁ…待って……」
「…待てない」
キスの合間にそう囁きながら、その手でバスタオルを外してくる彼。
完全にタオルを取り去ると、その手がぴたりと止まった。
「………」
「……、」
私の体を無言で見下ろしてくるその視線が痛い。
気に入らないなら気に入らないでそう言ってほしいのだけれど…
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