第12章 弦月
「あの…蛍…。」
やってしまった。
いくら和奏が倒れてあせってたって言っても…
こんな時間に医務室に人がいない事くらい気付けただろう。
和奏が気まずそうにこちらを見上げている。
「いいんだよ。これで。鍵は開いてるわけだしさ。しばらく中で休んで行きなよ。戻ったらまた無理にでも働いちゃうんだから。」
ドアノブに手を掛けると、予想外にすんなり開いたので、
中に入り、和奏をベッドに下ろした。
「でも…こんな所に1人で居るのは寂しいし、部屋に…。」
「ダメだよ。部屋に戻っても他のマネージャーさん達に合わせてお喋りしちゃって、休めないでしょ。それに…僕が和奏の事置いて行くわけないでしょ。」
部屋の隅から、椅子を持ってきてベッドの側に座ると、
和奏も安心したように横になった。
「うん…。あの…ありがとう。」
「別に、お礼言われるような事した覚えないけど。」
何が面白かったのか、和奏はふふふと笑っているので、昔の癖で和奏の前髪の辺りをサラサラと撫でる。
「もう休みなよ。」
「…、寝るまで、そうしててくれる?」
昔から和奏が眠れない時はこうやって頭を撫でてあげていた。
「…。言われなくても、そのつもりだよ。」