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【ハイキュー!!】月と影の奏で R18

第12章 弦月


「木兎に強制連行されてきたじゃ、恩売って損した。」

第三体育館では黒尾さんが待ち構えていた。

「別に木兎さんが引っ張って来なくても来るつもりでしたよ。」

約束を破った後の事を考えると、素直に従うのが得策だろうと思っていた。

「そうなの?でも、練習するっつっても、今日のツッキーのブロックじゃあなぁ…。何でそんなにイライラしてんの?」

答えなんて聞くまでもないけどねぇと黒尾さんの顔に書いてある。
本当に侮れない人だ。

「いや…べつに。」

「まぁ、いいけどね。でも、冷静でクレバーなプレーがツッキーの持ち味だろ?イライラしてたら台無しですよ。」

プレーにまでイライラが出てるなんて、重症だ。
相手チームの人がわかってるくらいだから、王様だって気付いてるんだろう。

「だから、とにかく跳べばいいんだよ!頭の中空っぽになるくらい!よーし!赤葦ー、トス上げてくれー!」

うずうずと僕達の会話を聞いてきた木兎さんが、
我慢の限界という様子で声をあげた。

…赤葦さん、いつの間に来たんだろ。

「木兎のアイディアは極端だけど、一理あるな。ツッキーは考え過ぎなんだよ。たまには頭の中空っぽにしてみたら?」

「黒尾くーん!ツッキー!早く早くー!」

コートの中で呼ぶ木兎さんに答えるように、
黒尾さんが歩いていく。

頭の中…からっぽに…。
木兎さんと、黒尾さんの考えを心で反復した。
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