第2章 月華
それからは、すっかり僕の中に住み着いた黒い感情といつも一緒だ。
何だか得体の知れない…ただイライラする感情。
他のやつに無邪気に笑う和奏を見るだけでイライラする。
少し前まで、僕の幼馴染なんだから社交的で、皆から好かれて当たり前…とか思っていた頃の自分が、全く理解できない。
他の男から連絡先を聞かれたり、遊びに誘われたり、
何度も告白された経験がある事だって知ってる。
和奏は僕には言わないけど。
そういう和奏の態度も僕をイライラさせるんだ。
「蛍…そろそろ寝るよね?えっと…私、ソファーで…」
お気に入りのブランケットを手に和奏がこちらを覗き込む。
なんで、僕の我慢は和奏に伝わらないのだろう。
なんで、僕はこうも男として意識されていないのだろう。
「はぁ。本当…いい加減にしてよね。」
僕の黒い感情がため息と共に外へ漏れる。
今まで自分の中にしまい込んでいた感情は、一度外へ出すと、どう扱っていいのか全くわからなかった。
それからの事は鮮明に覚えている。
僕はただ感情に任せて、自分の欲を和奏にぶつけた。
キスも、その続きの全てが和奏としたいと願っていた行為だ。
ただ…僕の妄想の中では和奏は笑っていたのに。
僕の下で身を縮めて泣きじゃくる和奏を見下ろすと、
心が一気に冷えていくのを感じた。
ほら、やっぱり和奏は僕のことなんか好きじゃない。