第12章 弦月
「だって、ツッキーの次に予約入れてたのは俺だろ!」
「いや…和奏は予約制じゃないですし、木兎さんだけはダメだって、以前にお伝えしましたよね?そもそも、僕と和奏は元々付き合ってませんし。」
木兎さんとの会話はいつもツッコみどころ満載で…頭が痛くなる。
「何で俺はダメで、あのセッター君ならいいんだよ!」
「…。」
別に僕が王様ならいいって許可した覚えはない。
そもそも、僕に木兎さんはダメだとか、王様はやめとけとか…そんな事言う権利なかったんだ。
思わず黙りこんでしまうと、後頭部にガシっと衝撃が走る。
「その辺にしとけよ、木兎。」
「黒尾くん!」
この後ろから僕の頭を掴んでいるの人は黒尾さんらしい。
「いじめるのはコートの中で…だろ?とっとと始めようぜ。」
黒尾さんの言葉に、「俺が一番活躍する!」とチームメイトのところへ戻っていく木兎さん。
「黒尾さん、あの…木兎さんを追い払ってくれて、ありがとうございます。」
いつまでも掴まれている後頭部を振りほどき、
黒尾さんに軽く頭を下げる。
「タダとは言ってないだろ。練習終わったら自主練付き合えよ。」
それだけ言い残して黒尾さんも音駒の群れに戻っていく。
あの人達といると…本当にペースが乱される。
梟谷のコーチの掛け声で、練習がスタートした。