第12章 弦月
和奏が王様と付き合い出してから、全部が不調だ。
もちろん、バレーボールも…集中なんて出来るわけないのに、こんなタイミングで合宿なんて、本当に最悪だ。
「ツッキー大丈夫?なんか、顔色悪くない?」
山口が隣の席からこちらを覗き込む。
「別に。移動に疲れただけだよ。」
それより…あれは明らかに体調悪いでしょ。
何で無理ばっかりするかな…。
清水先輩の隣に座る和奏の後ろ姿をみる。
出発前の集合の時、いつもより顔色の悪い和奏が気になっていた。
それにバスでの移動も…和奏はあんまり眠れないだろうし。
「ツッキー、本当に大丈夫?降りれる?」
山口が心配そうに振り返る。
「山口、煩い。大丈夫だって言ってるでしょ。」
荷物を背負い直し、バスを降りる。
前方でキャプテンが黒尾さんと握手しながら、何か話しているが、
特に興味ないので、さっさと体育館に入ってアップを開始した。
「へいへい!ツッキー!」
…。
アップを始めて間も無く、後方から馴染みのある声が聞こえる。
が、厄介なので聞こえなかったフリをする事に決めた。
「え!?ちょ…無視!?酷くない!?聞こえてるくせにー!」
バタバタと俺の前方に回り込んでくる。
…これじゃ、無視出来ないじゃん。
「あっ、木兎さん。居たんですね。」
「ツッキー、相変わらず冷たい!会いたかったくせに。ってか、聞いたぞ!皐月ちゃんと別れたんだって??」
…。
無駄に大きな声で…。
「えっと…、どこからツッコんだらいいですか?」
入り口付近でザワつく烏野高校の面々。
「うわ…。今のはキツい。」
「ってか、月島にあれは禁句だろ。。。」
「龍、見ろ!あれが傷口に塩を塗り込むってやつだ。」
「俺、月島が可哀想に見えてきた…」
「ツッキー…」
全員煩いよ。
チラッと睨んで、黙らせる。
和奏と王様がまだ体育館に入って来てないのが救いだ。