第12章 弦月
本当に…勘弁して欲しい。
まずは部外者達の噂話。
「3組の影山君と皐月さん、付き合い始めたらしいよ!」
「知ってるー!この前、手繋いで歩いてるの見たー。」
「あれ?皐月さんって月島君と付き合ってたんじゃなかったっけ?」
知りたくない情報が山程入ってくる上に、
「僕、関係ないから。元々付き合ってもないし。」
なんて、一々弁解をしている自分にもイラっとする。
次にバレー部の面々。
王様と僕を見比べ、僕に憐れみの視線を送ってくる3年。
「お前の気持ちはわかるぜ。お前は嫌な奴だけど、こういう時は助け合おう!」と、ウザいだけの絡みを繰り返してくる2年コンビ。
何か言いたそうにしてるくせに、結局何も言わずにオロオロしてる山口にイラっとする。
そして、王様。
毎朝、毎晩仲良く登下校するだけじゃ飽き足らず、
聞いた話では王様は和奏の部屋に入り浸っているらしい。
王様が和奏の事を急に名前で呼び出したのも気にくわない。
僕だけの特権だったのに。
でも、何よりも気にくわないのは和奏が僕を避けている事。
ここ最近は「おはよう。」「お疲れ様。」そういう最低限の言葉しか和奏の口から聞いてない。
そして、極め付けは先週から突然、和奏が王様の事を「飛雄」と下の名前で呼び出した事。
王様の下の名前なんて、意識した事なかったから、最初は何を言っているのかと思った…。
ってか、先週から急に親密になり過ぎだよ。。。
何かあったの?
なんて…聞きたくもないけど。