第10章 新月
それからインターホンが鳴るまでは数分だった。
もう少しで止まりそうな涙に苦戦していると、
もう一度インターホンが鳴らされ、同時に扉が開かれる。
「ん?チェーン??って、皐月、そんなとこで…。泣いてるのか?とにかく、開けろ!」
影山くんが来るまでに泣き止む予定だったのに。
「泣いてたのバレちゃったね。」
立ち上がり、チェーンロックを外すと、同時に影山くんが内側に滑り込んで来た。
「ボケ。俺に隠す必要なんかねぇ。…月島が来たのか?」
「あっ…うん。そう。でも、大丈夫だよ。扉越しに話して…ちゃんとお別れしたの。」
そう言うと、ふいにまた涙が溢れそうになった。
そんな様子を感じ取ったのか、影山くんが無言で抱きしめてくれる。
心配ばっかり掛けちゃダメだよね。
「えっと…蛍が、影山くんと上手くいかなくて、泣き言言いたくなったら聞いてくれるって言ってたよ。」
笑って欲しくて、わざとヘラヘラと伝えたのに、
「泣かすわけないだろ。」
真剣に返して来るから、急に恥ずかしくなって、
私も黙り込んでしまった。