第10章 新月
それからは何だかバタバタと慌ただしく過ぎ去った。
「あれ?何で…影山と皐月さんが一緒に登校?」
「付き合ってるからに決まってるだろ、ボゲェ。」
えー!えー!と騒ぎ立てる日向くん。
「あの…皐月?」
本当か?と心配そうに尋ねてくるキャプテン。
「あっ…本当です。あっ、でも、部活では迷惑掛けないようにします!」
「マジかよー。信じらんねぇー。」
「おい、影山!お前、皐月に変な事したら、タダじゃおかねえぞ!清い交際だ!交換日記以上の事は許さん。」
「…もっとすごい事しました。」
平然とすごい発言をする影山くんと、
もっとすごい事って何だー!?と、何故か泣き崩れる田中さんと西谷さん。
「ねぇ、和奏ちゃん、本当に…いいの?」
こっそり寄ってきた潔子先輩が、チラッと蛍の方をみた。
「…大丈夫です!終わった事ですから!それより、私、ドリンクの準備してきますね。」
慌ただしくと言えば、部活だけじゃなくて…
「和奏、一緒に昼飯食うぞ」
いつの間にか、私の事を下の名前で呼ぶようになった影山くんに、クラス中がざわついていたのは、
付き合って間も無くの頃だった。
「ちょ、いつから影山と付き合ってるの?」
「ってか、あのいい感じだった幼馴染くんは?」
そんなクラスメイトからの質問も、なんとなく答えているうちに、いつの間にか学校中の公認カップルになってしまった。
影山くんとのお付き合いは順調で、大した進展こそないが、
不安なことや悲しいことなど、カケラも見つけ出せないような、そんな絵に描いたように温かな時間だった。
そして、蛍とは部活での短いやり取りや、挨拶だけをかわす関係になっていった。