第10章 新月
「…。王様と本当に付き合うの?」
蛍と影山くんの仲はお世辞にも良いとは言えない。
きっと手のかかる幼馴染を心配してくれてるんだろう。
「う…ん。影山くん、凄く優しいから…きっと好きになれると思う。」
大丈夫だよ。
私はたぶん、大丈夫。
だから、心配しないで。
「ふーん。和奏と王様ねぇ。僕には上手く行くとは思えないけど…勝手にしたら。上手くいかなくて、泣き言言いたくなったら、聞いてあげてもいいよ。」
いつもの素直じゃない言葉。
でも…温かみの篭った…懐かしい感じの言葉。
勝手にしたらと突き放しつつも、いつも、見守ってくれていた蛍。
「じゃあ僕、先に学校行くから。」
これからは一緒の道を歩く事はないんだね。
ねぇ、蛍。
蛍に好きな人が出来たら…その時は私には言わないで。
蛍みたいに泣き言聞いてあげるなんて…私には到底言えないだろうから。
遠くから見ているだけで、精一杯だろうから。
玄関だって事も構わず、その場に座り込んだ。
これ以上、影山くんに心配を掛けたくない。
止まれ。止まれ。と願っても、涙は溢れるばかりだ。