第10章 新月
「なっ…。」
自分は散々好きだの、なんだの言っていたくせに、
私の言葉を聞くなり真っ赤になり固まってしまった。
「ちょ…なんか言ってよ。私だって恥ずかしいのに。」
ポカっと叩くと、その腕を影山くんに掴まれる。
「その…あんまり可愛い事言うな。俺の理性を崩壊させる気か、ボゲェ。」
そう言われて、思わず真っ赤な影山くんの顔から、下半身へと視線を移してしまう。
そこはしっかりと反応していて…。
もしかして…ずっと我慢してくれていたんだろうか?
影山くんが可愛らしくて…いや、可愛らしいと言うより…愛おしい。
「何笑ってんだよ!あんまりバカにするとキスすんぞ!」
先程から赤い表情のままの影山くん。
もっと真っ赤になった顔が見たくて…
背の高い影山くんに向かって背伸びをして…
そのまま唇を重ねた。
触れるだけのキス。
「お…おい。今の…。」
私の狙い通り、茹で蛸のように赤くなった影山くんが、口をパクパク開いている。
「キスするぞって言ったのは影山くんでしょ?」
えへへっと笑っていると、グッと体を引き寄せられる。
影山くんの手のひらが頭の後ろに回って…真っ赤な顔が凄く近くにある。
「皐月だけズルい。俺もキスしていいか…?皐月が嫌じゃなければ…。」
もう唇が触れそうなくらい近くで話しているのに…。
きっと影山くんは、私が嫌だと言えば、ここでやめられるのだろう。
少しだけ顔を影山くんに寄せて、再びこちらからキスをする。
私からの答えだ。
唇を離すと、今度はすかさず影山くんの唇が追ってくる。
長いキスだった。
触れているだけで、影山くんの熱が伝わってくる。
「こんなの反則だろ。…病み付きになりそう。」
グッと頭を影山くんの胸に引き寄せられているので、表情は見えないがきっとまだ真っ赤な顔をしているんだろう。