第10章 新月
それに気付いた途端に、恥ずかしさが襲ってくる。
誰かにこんなに真っ直ぐに好きだと思ってもらった事なんて、今までにない経験だった。
そして、その気持ちに応える事が出来ないかもしれない自分が不安になった。
「なんて顔してんだよ。まだ泣きたいなら、胸貸してやるぞ。」
ほれ、来い。とばかりに腕を広げる影山くん。
私が蛍の事でグズグズ泣いてても、泣くならここで泣けと言ってくれる…優しい人。
応えたい。
今すぐは無理でも…いつか影山くんの気持ちに、ちゃんと応えたい。
「なんだよ。今度は笑ってんのかよ?忙しい奴だな。」
そんなに俺の胸に飛び込むのが嫌か。なんてボヤキながら、そっぽ向く影山くんが可愛らしく見える。
大丈夫。
私、きっと影山くんの事、好きになる。
「影山くんのおかげだよ。」
「ん?」
「今笑えるのは全部影山くんのおかげだよ。影山くんが居なかったら、きっと今も泣いてた。」
「なら、良かった。」
それだけで、十分嬉しそうな表情になる影山くん。
もっとちゃんと伝えておきたい。
「あの…私、影山くんの事、ちゃんと好きになれるように頑張るから…。だから…その…彼女としてよろしくお願いします。」