第1章 朔
「なんでこんな事になったんだっけ…?」
窓の外の明るい光を眺めながら、寝起きのぼーっとした頭で呟けば、マグカップに入ったコーヒーを片手に蛍がこちらを振り返った。
「なんか言った?」
「ううん。ひとりごとだよ。それより蛍、今日も朝ご飯食べないの?コーヒーだけ?」
「朝練終わってから食べるから平気。和奏が作るなら食べてあげてもいいけど。」
ん。と蛍がコーヒーの注がれた私のお気に入りのマグカップを差し出す。
「冗談でしょ?女子の朝の用意は時間がかかるんですー。蛍の朝ご飯作ってる暇なんてないの。」
我ながら可愛くない返答も、蛍にとってはいつもの事で、興味無さそうにコーヒーをすすっている。
向こうだって長い付き合いで、私の返答などお見通しなのだろう。
洗面台で顔を洗いながら、ふと考えを引き戻される。
そうそう。なんでこんな事になったんだっけ。
記憶が数ヶ月前に遡る。
あの日はお天気が最悪な日だった。