第5章 寒月
皐月の月島への想いを聞く度に、
心臓がズキズキと音を立てている気がするけど…
本当の皐月を知れて嬉しいと思ってしまう。
俺しか知らない本音なんだと思うと、舞い上がりそうになる。
こんな矛盾した気持ち…初めてだ。
俺、やっぱり皐月が好きだ。
他の奴の事をどうしようもない程好きで、
嫌われるのが怖くて体を許してしまうような弱さがあって、
それを辛くないって1人で意地をはっちゃうような強さがあって…
そんな皐月が好きだ。
1人で強がらないで欲しい。
1人で泣かないで欲しい。
ただ…笑って欲しい。
皐月にとっての幸せって何だ…?
なんて考えると、どうしても月島の影がチラつく。
皐月が口にする程、月島が皐月を嫌っているようには、俺には見えない。
でも、ごめん。
お前の幸せの為とか…そんなカッコいい理由じゃなくて、
ただ俺がお前を笑わせたいんだ。
涙がこぼれるなら、拭ってやりたいんだ。
寂しい時は抱きしめたいんだ。
俺が…そうしたいんだ。
「皐月、悪りぃ。俺、そろそろ部活しに戻る。お前は…どうする?」
正直に言うと…部活の事なんて忘れていた。
ムカつく事に月島の事を考えてる時に思い出してなければ、無断でサボってしまうところだった。
「私は…ごめん。今日は体調悪いから、このまま家に帰る。」
皐月の返答にホッとした。
皐月を月島に会わせたくなかったし、
2人が一緒に居るところなんて見たら…月島に殴りかかりかねない。
「おう。その…時間無くて、家まで送ってやれなくてごめんな。」
言いたい事は、そんな事じゃない。
もっと伝えないといけない事があるだろ。
でも…今の皐月に伝えていいのか?
俺に希望はあるのか…?
負担にならないか…?
肝心な事がなかなか言い出せない。
「あっ…影山くん。今日話したことは…」
俺がグズグズしていると、皐月が先に口を開く。
そんな事、わざわざ言われなくても、皐月の本音を知ってるのは俺だけで充分だ。
「言うか。ボゲェ。」
「蛍にも…」
こんな時にも月島の心配か…。
「…。おう。」