第3章 薄月
物事は計画通りに行かないようだ。
皐月に出会うまでは、彼女だとか、デートだとか…そういう物には全く興味が無かった。
初めは単純にいい奴だなぁと思った。
バレーの話が通じる女子が珍しかったのもある。
性格の悪い月島にも優しくしてるんだから、本当に根っから優しい性格なんだろうと思った。
気付いた時には、皐月の事ばかり目で追いかけていた。
月島とはいつも一緒に居るけど、付き合ってる訳じゃないと本人の口から聞いた時に、初めて感じる安堵感を覚えた。
そして、皐月の事が好きなんだと自覚した。
自覚したはいいが、恋愛なんてどうしたらいいのか、
全くの守備範囲外だ。
今日も慌てて出てきたが、皐月が付近に居る様子はない。
先に行ってしまったか…もしくは、女子の着替えとはもっともっと時間のかかるものなのか…。
いや、着替えシーンを想像した訳じゃないぞ。
頭を軽く振って、妄想を追い出すと、
ふと目線の隅にバレーボールが映った。
「仕舞い忘れか。」
近付いてバレーボールに手を伸ばした時に、かすかに声が聞こえてきた。