第3章 薄月
「でも、正直なところ、なかなか皐月に声掛けるのは勇気いるよな。」
東峰さんがヘラヘラ笑いながら言う。
そう。皐月を狙う男共には共通の敵がいる。
「旭は保護者が怖くて、声掛けれないんだべ?今日も、俺と皐月が話してるだけで、睨んでたし。」
「保護者?あぁ、月島か。」
皐月と月島は産まれた時からお隣同士の幼馴染だそうだ。
前に山口が皆に説明してたのを聞いた時は、
よく月島みたいな性格の悪い幼馴染が近くに居て、
皐月のような明るくて、素直な性格に育ったものだと驚いた。
「保護者って言うか…あの2人、本当に付き合ってないの?」
東峰さんが山口に話題を振る。
この人…ビクビクしながらも、割と本気で皐月を狙ってるようだ。
「ツッキーと皐月さんは本当に付き合ってないですよ。お似合いだから付き合っちゃえばいいのに。」
「えー!ヤダよ!月島と皐月さんが付き合ったら、俺が困る。」
呑気に答える山口に、ぴょんぴょん跳ねながら、必死の様子の日向。
こいつも本気で皐月を狙ってる。
少し前までなら、「俺は関係ない。バレーしか興味ないし。」とか思ってられたんだろうけど…
いつの間にこんなに皐月の事が気になるようになったんだう。
「そういえば、月島は?」
そういえば、奴の姿がみえない。
そもそも月島が居たら、東峰さんが皐月の事を可愛いと発言するはずない。
と言うことは、かなり序盤から居ないのか。
「ツッキーならとっくに着替えて行っちゃいました。誰かとLINEしてたから、また告白の呼び出しかもしれません。」
「なんで、お前が自慢してるんだよ。」
あいつ…あんなに性格悪いのに告白とかされてるのか。
日向とは違うところに心の中でツッコミを入れて、俺も部室を後にする。
タイミングが合えば、皐月と教室まで一緒に行けるだろう。
今日は邪魔な月島も女子からの呼び出しで居ないらしいし。