第17章 満月
「で?」
結局、歩いている間は何だか気恥ずかしくて、
二人ともずっと無言で歩いていた。
家に着いて、荷物を下ろすなり、
そう切り出したのは蛍だった。
「えっと…何が?」
私も荷物を下ろして、二人分の飲み物をグラスに注いで聞き返す。
何だか…色々ありすぎて、蛍が何を聞いているのか…。
いや、検討はついているけど、間違うと恥ずかし過ぎる。
「王様の事だよ。まさか、僕が今朝二人のことを何も気にしないで家に残したと思ってるの?」
やっぱり、その話だ。
「あっ…うん。ごめんね…心配掛けて。影山くんとはちゃんと別れたよ。」
「そう。じゃあ…僕の話聞いてくれる?」
ソファーテーブルに飲み物を置いた私を、蛍がぐっと引き寄せた。
「いや…あの…それはまだ…。だって…別れたのも今朝の事だし…。」
今朝別れたところなのに、すぐに蛍と付き合うのは…。
そりゃ、いつかは付き合いたいと思っていたし、
その為に女子力を磨こうとも思っていたけど…。
「じゃあ、いつまで待てばいいの?明日?明後日?」
「えっと…」
「僕はもうあんな思い2度としたくない。和奏の事、1分1秒でもフリーにしとくと、他の誰かに取られるんじゃないかって心配なんだ。」