第16章 佳月
昨日の俺の決意は、何だったんだろうか。
少しでも早く和奏に会いたくて、いつもより早い時間に家を訪ねた俺を、和奏は少し青いような、驚いた顔で出迎えた。
昨日は突然帰ってごめん。
まずはそう伝えようと思っていたのに、言葉が出ない。
だって、和奏が月島と一緒に居るなんて、想像してなかったから。
「あの…飛…影山…くん。」
何…苗字で呼んでんだよ。
下の名前で呼ぶのには2ヶ月もかかったのに…
苗字に戻るには一晩かよ。。。
何で…月島と居るんだよ。
朝まで2人で何してた?
最悪だ。
昨日、和奏を1人になんてしなきゃよかった。
言いたい事はたくさんあるのに、思っている事は何も口から出てこない。
「和奏、無理しなくていいよ。王様とは僕が話すよ。」
奥から月島が寄ってくるのを、キッと睨む。
「お前、どの立場で言ってるんだよ。」
勝手に彼氏ヅラしてんじゃねぇぞ。
「…。だから、それを今から教えてあげるって言ってるんでしょ…。」
月島もこちらを睨みつけている。
「蛍!影山くんとは私が話すから、蛍は帰って!」
和奏が月島を睨みつけている。
でも、これは侮蔑を含む視線じゃない。
和奏が月島を睨んでいるのは、俺への憐れみからだろう。
影山くんと苗字で呼ばれている時点で、
和奏の言う話の内容なんて簡単に想像出来る。
「はぁ。ちょっとは僕の気持ちも考えなよね。和奏がそこまで言うなら、一旦帰るけど。…ねぇ、和奏が嫌がるよう事したら、許さないからね。」
最後の台詞だけ俺に向けて発した後に、月島が和奏の家を後にする。
和奏が嫌がるような事したら…って、
それこそ月島にだけは言われたくない。
それより、今は和奏だ。