第15章 三日月
時間にすると5分程だった。
一生辿り着かないかと思う程長く感じたし、
もう着いたのか…と驚く程短くも感じた。
ポケットに手を突っ込んで、そこで少し冷静になる。
僕…携帯以外何も持った来なかったんだ。
和奏の家の鍵も、自宅の鍵とひとまとめに鞄の中に入れっぱなしだ。
和奏が入れてくれなければ…。
前にチェーンロックを掛けられた事を思い出す。
あの時は、王様と付き合うのだと告げられたんだ。
そんな嫌な記憶に、少し躊躇しつつも、
和奏に会いたい気持ちの方が僕の中で圧勝した。
先程からお互い無言のまま繋がった携帯に話し掛ける。
「和奏、聞いてる…よね?今、家まで来てるんだ。開けてくれない?」
「……。」
電話越しには相変わらず無言だけど、中でガサゴソと人の動く気配がある。
怖くて仕方がない。
ドキドキしながらも、待つことしか出来ず、
和奏の反応をじっと待つ。
[プッ。プープー。]
突然耳元で、僕と和奏を繋ぐ電話が途切れる。
「和奏!?」
思わず玄関の扉に向かって叫べば、扉が開いて、
ゆっくりと和奏が顔を覗かせた。
「蛍…?」
安堵感からか、
和奏の可愛さからか、
とにかく色んな感情が入り混ざって、
和奏を引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。