第15章 三日月
予想外にすんなり繋がった電話に、
そんな的外れな事を考えていたら、喋り出すのが遅れた。
「和奏?1人なの?あの…大丈夫?」
思っている事が言えず、途切れ途切れになってしまう。
これでは、女子と会話した事のない奴みたいだ。
恥ずかしすぎる。
「あの…。えっと…。」
和奏が何か言い淀んでいると、窓の外に稲妻が見えた。
ゴロゴロと響く雷鳴と一緒に、ひっ…と小さな悲鳴が聞こえた。
それが聞こえた時、居ても立っても居られず、部屋を飛び出した。
「和奏?1人なんでしょ?大丈夫だから。このまま電話切らないでよ。」
和奏は何も言わないが、電話を切る様子はない。
今なら間違いなく和奏の考えている事がわかると断言出来そうだ。
雷が怖くて仕方ないのに、僕に頼ったいいのか、
自分の中で答えを出せていないんだろう。
きっと、王様の事とか、
前の雷の夜の事とか…
色々考えてしまってて、一言も話せないでいるのだろう。
例え和奏が王様と付き合っていたって、
頼られて断る理由になど、なるはずがない。
和奏が僕を頼ってくれるなら、何を投げ出しても駆け付けるから。
だから、僕にあの日を…あの雷の日をやり直すチャンスが欲しい。
気まぐれだろうが、気の迷いだろうが、
和奏が電話に出てくれた幸運を噛み締めながら、雨の中をひた走った。
雷のお陰で、和奏が頼ってくれるなら、
雨に打たれる事も、雷に打たれる事さえ平気な気がするなんて…本当にどうかしてる。
早く和奏の顔が見たい。