第15章 三日月
そういえば、僕が和奏に謝った事はどれくらいあっただろう。
和奏の謝る姿ならすぐに思い出せる。
「蛍ー、ごめんね。」
「許してくれる?」
ランドセルを背負った和奏や、もっと小さい和奏だって。
「私も…悪かったから。蛍もいい加減、機嫌なおしてよ。」
中学校の頃の和奏だって。
「ごめん。蛍。」
最近の和奏は…泣き顔しか想像出来なくて、
ふーっと溜息を吐いた。
それに比べて、僕はどれくらい謝った事があっただろう。
「ごめんね、和奏。」
小学校の低学年くらいまでは、僕も素直に謝っていた。
あの頃は、和奏が怒っているのが一番嫌だった。
「和奏が反省してるなら、許してあげてもいいよ。」
中学の頃は…素直に謝る事は難しくなっていた。
…。
高校に入ってからは謝った記憶が無かった。
謝らなくても、和奏ならわかってくれる。
僕の思っている事は、全部理解してくれる。
そうやって和奏に甘えて、
僕の気持ちは何も伝えていなかった。
窓の外を見ると、雨足が一層強まっている。
窓の外にピカッと大きな稲妻が走ったのが見えた。
追ってズーンと響く雷鳴が鳴り響いた。
「あっ…」
和奏は大丈夫だろうか…?
王様と一緒だから、大丈夫だろう。
そうは思ったはずなのに、思わず携帯を掴み、
発信履歴の一番上にある和奏の名前をタップした。
「あ…の…、蛍…?」
そういえば、電話越しに和奏の声を聞くのはいつぶりだろう?