第14章 煙月
和奏の方に目線を送ると、振動する携帯を片手に見下ろしているだけだった。
「出ないのか?」
「あ…うん…。」
ザワっと全身に嫌な予感が走る。
和奏のこの反応…。
電話の相手は確認しなくてもわかる。
「月島か?」
「…。」
ほら。
まぁ、そんなの正解したって、全く嬉しくない。
「貸せ。俺が話す。」
見逃さなかった。
ベッドから俺が立ち上がると、和奏が焦った表情をしたのを。
「あの…、大丈夫。切っちゃうし。」
そんな慌てた表情で電話を切っても、逆効果だ。
そんなに俺と月島が話したら困るようなこ事があったのだろうか。
ずっと摘み取り続けていた不安の芽が確信に変わった。
「なぁ…合宿中に…。いや、あの晩に月島と何があった?」
きっと、なんの余裕もない顔をしているんだろう。
自分のことなのに、おかしくなる。
知っていた事だろう。
今更確認しなくても、合宿で和奏と月島の間に何かあった事くらい。
忘れた事などなかっただろう。
和奏がどれだけ月島の事を好きだと思っていたかくらい。
何も言えないのは肯定と同じだ。
「キスでも…されたのか?」