第2章 月華
「おはよー。ツッキー!皐月さん!」
和奏が僕を追い掛けて来て、学校までの道のりを歩いると山口が後ろから声を掛けて来た。
「おはよう、山口君。」
「今日も一緒に登校?」
和奏は男子バレー部のマネージャーだ。
朝練の時間に一緒に登校しても不思議はないが、
山口とは小学校からの付き合いだし、僕と和奏の関係に進展があったんじゃないかと、いちいち確認したがる。
「うん。蛍が迎えに来てくれて。私、朝は弱いしね。」
和奏は僕が泊まった事は絶対に言わない。
誰にも知られたくないんだろう。
だから、僕たちは仲良し幼馴染を演じている。
「朝苦手なのに、よくマネージャーやろうと思ったよね。」
中学までは当たり前のように、僕の所属する部活のマネージャーをしていた和奏。
高校入学の直前にセフレの関係になったから、正直、高校ではバレー部のマネージャーはやらないんじゃないかと思ってたんだ。
まぁ、もちろん僕の為ではないだろう。
「蛍は余計な一言が多いんだから。素直に感謝したらいいのに。」
むぅとふくれっ面になると、ジャージに着替える為、
1人女子ロッカーの方へ消えていく和奏。
今の表情、かわい…
「さっきの皐月さん、可愛かったね!ツッキー。」
「うるさい、山口。」
そして、いつも通りの朝練。
そう、今朝もいつも通り…和奏をそういう目で見てる奴らが大勢いる。
日向と王様…こいつらは問題ない。
和奏が相手にするはずないから。
田中さんと西谷さんのあわよくば感溢れるセクハラ行為は見逃せないが…
むしろ和奏はひいてるので問題ない。
意外と侮れないのは3年生たちだ。
特に菅原さん。
今だって和奏のドジなミスを指摘しながら、
頭をポンポンと撫でたりしている。。。
和奏も…和奏だ。
頭撫でられたくらいで、なんて顔してるだよ。。。
ふと、手にしていたボールに視線を落として考える。
和奏に彼氏が出来たら…僕たちどうなるんだろう。
本当…朝からイライラさせてくれるよね。
朝練終わったら、お仕置きだな。
持っていたボールをふわっと上に投げ、サーブのフォームで力の限り叩きつけた。