第6章 後悔は先に立たないのにやっちまうことは多い(前編)
そして唐揚げは大きく開けたわたしの口の中へと入る…一歩手前で、なにを思ったのか声なく近づいた黒尾くんの口にぱくっとくわえられてしまった……なんだと!?
わ た し の 唐 揚 げ !
獲物を横取りされそうになり、本能に身をまかせたわたしの反応は素早かった。
食われてなるものか!躊躇なく黒尾くんに飛びつくとその口にくわえられている唐揚げにかぶりつき、抵抗される前にぐいっと引きちぎって自分の口の中へ押し込んだ。
待ちに待った唐揚げの味が口の中いっぱいに広がる。香ばしくてジューシーでちょっぴりスパイシー…ああ、幸せの味。
「………んむ?」
もぐもぐ味わいながらなんだか静かな二人を見てみれば、やっくんは青い顔で黒尾くんは赤い顔をして固まっているではないか。
すごい顔色だなぁ。首を傾げてから戻し、よーく噛んだ唐揚げをごっくんした次の瞬間。
「おっまえなにしてんだあ!その口の唐揚げ飲み込んだら許さねぇからな?」
先に石化を解いたやっくんが黒尾くんの胸ぐらをガッと掴んで凄んだ。
わお、黒やっくん出たよこんにちは。見た目可愛いのに中身が男らしいやっくんは怒ると怖い……そんなギャップ要らないんだけど、どうやら今回の被害者は黒尾くんのようなので傍観に徹する。
「うぉ俺だってまさかのラッキーハプニングんぐっ……けほっ」
にしてもお腹がすいた。唐揚げを食べたおかげで食欲が刺激されてしまった……二人とも食べないのかな?食べないならもらっちゃうよー。
「!?……まさか」
「……飲んじった」
両手を合わせていただきます。まずは卵焼きを……うむ、今日のはだし巻きですか。手が込んでますな。
「っ出せ!今すぐ吐き出せ黒尾ぉお!」
あ、唐揚げにタルタルとかまじうまー…海苔とおかかでご飯の相性ばっちり!しゃきしゃき野菜炒めも入ってるし…どこのお弁当屋さんかな?これ手作りとか凄すぎるんですけど、うらやますぃー。
「お前が揺らすからだろうがぁ!味わって食えなかったじゃねぇかどうしてくれんだ夜久!」
あ、こっちはチーズ入り魚フライにソースだ!うまうま。昆布の佃煮とご飯も合うよね、春巻きおいしいけど野菜の比率が少ないから別でサラダが欲しい感じです。
「「って、おいコラニャンニャン?」」