第2章 ~夏~ 7月
今日も広場では演奏家が陽気な音色を奏で。
通りのパン屋からは、甘く香ばしい香り。
立ち並ぶ商店の店先には、色とりどりの花。
その一つ一つが、リヴァイと居るとかけがえのない物に感じる。
「いい街だな」
隣からそんな声が聞こえた。
「そうですね。いい街です」
「まぁ……ちと悪趣味だが」
彼は眉をよせ、無駄に装飾された建物を見やった。
「でも。あの装飾を『造る』仕事があって、それで生活していらっしゃる方が居ますから……」
それはそれで良いんじゃないか?と彼に問う。すると彼はしばし思案した後、私の耳元に口をよせた。
「大した事を言うもんだ」
これまでにないほど、近い距離。
彼の吐息が、耳元を掠める。
「……っ!リヴァイ兵士長、近いですっ!」
「予想通りの反応だ」
「なっ!からかいましたね!?」
呆れたように、ため息をつくリヴァイ。これは完全に遊ばれている。
なんだか悔しい。ほんの一部かもしれないが、私だって彼の事を知っているつもりだ。
「これだから男っ気のない奴は……」
そう、例えば今の言葉だって……
「言うと思った」
遊ばれたのが悔しくて。
私は貴方を見ていると知ってほしくて。
そんな言葉を少し意地悪な気持ちで……
でも、精一杯の笑顔で伝えた。
リヴァイに対して感じていた、うやむやな感情。
それは日が沈む頃には『彼が好き』なのだと。
1つの形として、私の心に出来上がった。
~夏~ END