第1章 【Forever mine:増田貴久】
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寝た………かな。
後ろ髪をひかれながら
恵麻の首筋に
噛み付くくらい強く
シルシを遺して
シャワーを浴びる。
シャワーの暖かさと
全てを流してくれる水圧に
ホッとしたのか
嗚咽が止まらない―――…。
キレイゴト、
言っちゃってさ………。
鏡の中の自分に
嫌気がさす。
ホントは、嫌なんだ。
誰からも、
上書きされたくない……。
ホントは………
一瞬だって、
オレのコトを
忘れないでいてほしい。
喜びも悲しみも
恵麻の感情の全てが
オレによって
もたらされてほしい………。
おねがいだから…。
オレの知らない誰かに
オレだけが知ってる恵麻を見せないで。。。
だけど、、
キミに降りかかる雨に
傘をさすことができないオレには
そんなことを言う資格は………ない。
***
出掛ける支度をして、
恵麻が寝ている寝室に入る。
もう二度と逢えないと思うと、
最後に何をしたいのか
何ができるのか、
わからなくて………。
「………行ってきます。」
独り言だけでも、
この日常が続いていくって思いたくて
さよならだけは
言いたくなくて………
寝ている恵麻にそう呟いて
キスを落として
部屋を後にした―――…。