第1章 【Forever mine:増田貴久】
俺ってつくづく損な役回りだよね、
ほんと。
まぁ、あの二人から
話せる話ではないし、
あの流れで俺に白羽の矢が立つのは
自明の理だけど。
どうしたもんかな……。
あのあと増田さんにやんわりと
釘を刺してはみたものの
やっぱり耳、貸してくんなかったもんな。
マネージャーにまっすーのマンションに
連れてきてもらったものの
不在のところを狙って、
相手と話つけるなんて
まっすーにバレたら絶対嫌がる…
っていうか、
許してくれないだろうなぁ……。
そもそも俺、
まっすーから直接
家を教えてもらったことすらないのに。
不躾もいいとこだろ、これ。
あぁ。
胃が痛い……。
もうかれこれ30分は
この寒空の下でウロウロしてて
結構な不審者だろ、俺。
でも、やるしかないよな。
やらないなんて選択肢はないんだから。
そう意を決してインターホンを押す。
***
……そりゃそうだよな。
あの危機管理委員長の増田さんが
言い含めてないわけないよな。
諦めて帰ろうかと思ったそのとき、
解錠音と同時に自動ドアが開いた。
俺は半信半疑で
マネージャーに聞いた部屋番号まで
歩を進め、
恐る恐る玄関のインターホンを押すと
ドアが開いて出迎えられて―――。
「あの……突然すいません。
初めまして。
NEWSの加藤成亮です。」
「はい、存じ上げてます。
杉原恵麻です。」
「今日は増田に用事ではなく
貴女に、話があって来ました。」
「そうだろうなと思ったので
……解錠しました。」
「やっぱり…
増田には出ないように言われてました?」
「……はい。そのとき、
メンバーは来ないだろうって
言ってたんです、彼。
だけど、貴方が来た。
これは、彼とは話ができてない…
そういうことですよね?」
「御名答、です。」
「どうぞ。」
そう言ってスリッパが出されたものの
さすがに部屋に入るのは気が退けるな……
なんて戸惑ってたら―――。
「貴方がここに来たことも、
これから話そうとしてることも、
私から彼に申し伝えるということは
一切致しませんのでどうぞ、遠慮なく。」
「……じゃあ、お言葉に甘えて。」
「こちらにどうぞ。」
彼女に案内されるままに
ソファに腰を掛ける。