第9章 声
小「あの日…襲撃にあったとき、血相変えて走ってったじゃん。やっぱり、そういうことなんでしょ?」
小牧に言われ、あの日を思い出す。
今でもあの時を思い出すと背筋が冷える。
うずくまっている香を見た瞬間、居ても立っても居られなくて体が勝手に動いた。
それが、小牧の言う “そういうこと” なんだろう。
俺が答えずにいると、小牧が思い出したように口を開く。
小「あ。そういえば気付いてる?堂上ってさぁ時々名前で呼ぶよね。佐々木さんのこと」
最初の方は無意識に呼んでいて自分でも驚いた。
でもつい最近は故意的。
“香”って呼ぶだけで赤くなるってどんだけ慣れてないんだ、あいつは。
手塚が呼んでも赤くなることはないのに…だ。
いちいち可愛い反応するあいつが悪い。