第6章 ビール
篤「小牧帰るぞ!」
居ても立っても居られなくなったのか堂上教官が立ち上がる。
その様子を小牧教官と顔を見合わせて笑い合った。
小「はいはい。じゃあね佐々木さん、おやすみ」
『はい。おやすみなさい』
篤「あったかくして寝ろよ。おやすみ」
座っているわたしの頭をなでて、堂上教官は戻っていく。
優しい声と手の暖かさが残る。
『あーもってかれた・・・』
胸を押さえてソファーに倒れこみ、手に持ったビールを眺める。
『わざとなのかな…』
堂上 篤という人物は、天然でやってるのか、それとも計算なのか…。
不器用な人っぽいから計算ではないのだろうけど。
でも…相手は大人の男の人だから…
わたしだって…
ーーー教官のにおい、好きです
『ちょっと頑張ってみたのになぁ…』
そんなことをグルグル考えてると、いつもは酔えるはずのビールがただの苦い飲み物となった。