第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「ん?…最後はね…」
そして再び絵本を開き母が続きを話そうとすると、部屋の扉が開いた。
「おい、そろそろ行くぞ。こいつがさっきから涎を垂らしてて、見てるこっちが辛い」
そう言って現れたのは父だった。
父に抱っこされている白髪の少女は、今日が祭りと知るとても嬉しそうにしていた。
そして美味しいものでも想像してるのか、父の肩に涎をダラダラ垂らしていた。
「あっ、ごめんごめん!もうそんな時間か!」
そう言って少年を抱っこしたまま立ち上がる母も、ちょっと涎が垂れていた。
「自分で歩けるって。てか母さんよだれ!俺につけるな!」
「まぁまぁいいじゃない」
「よくねーよ!てかそれはどっちに対してだ!」
ジタバタ暴れる少年に母は苦笑しながら綺麗に無視すると、父と一緒に歩き始めた。
今日も少年の突っ込みはキレがあった。
「フランスパンが食べたい」
そして窓から出店を眺めていた少女はパン屋でも見つけたのか、そんなことを言っていた。
「……パンは駄目だ」
「…ぇ」
父の言葉に、この世の終わりのような表情をする少女。
それを見て父が慌ててた。
「わーお父さんが娘を虐めてるー」
「…うるせぇ、グリンピースを口に突っ込んでやろうか?」
「…ぇ」
そして母は自ら地雷を設置して踏んでいく。
そんな二人の様子を見て、少年は笑みをこぼした。
本当に、この両親は見ていて飽きない。
きっとこれからも、楽しい毎日が待っているんだろう。