第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「……暗っ、その絵本…子供向けじゃないだろ」
彼女の話を大人しく聞いていた少年は、かなりドン引きした様子だった。
黒髪で目つきの悪い少年は、ソファーから立ち上がると軽くため息を吐いた。
暇だから遊んでと言って母が持ってきたのは、この絵本である。
そもそも母から遊びを求めてくるなど、それはそれでおかしいのだが、何時ものことなので慣れてしまった。
「うん、そうだね。私も読むたびにそう思うよ」
母は本を閉じると、少年を引き寄せて抱っこした。
自分でそう思うなら持ってくるなよと、少年は内心突っ込んだ。
「しかも長すぎるだろ、まだ続きあるのかよ。てか最後はどうなるんだ?」
少年は母に背を預けると、頬や髪を触ってくる母に苦笑し、好きにさせていた。
何時までもベタベタしてくる母を見ていると、どっちが子供か分かったものではない。