第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
戦火の中心、アスガルド帝国。
ユーリは、向かってくる敵を片っ端から始末していった。
中には変な力を使う人もいるが、今の彼女にとってそれはなんの意味もなかった。
再生の力を持つ彼女に有効な攻撃など、そうそうあるはずがない。
ユーリは息一つ乱すことなく、辺りを見渡していた。
周りには倒れた人の山が見える。
そういえば銀色の髪の男が何か言っていた気がするが、何だったのだろうか。
ユーリに唯一攻撃を加えなかった彼は、彼女の力で弾き飛ばされ、瓦礫の傍で倒れている。
「ば…化け物だ!!」
血まみれで刀を振り回すユーリを姿を見て、誰かがそう言っていた。
あぁ、確かにそうなのかもしれない。
だから、早く私を殺して?
ユーリは涙を流し、笑いながら、目の前の海軍たちに刀を向けた。
「ユーリ!!」
ふと、誰かが私を呼ぶ声が聞こえた。
目の前で怯えている海軍から視線を逸らし、声のした方を振り向くと、そこには刀を持った男が立っていた。
「……死の外科医っ…!?」
ローの登場で、周りの人たちがざわついていた。
ユーリは静かにその様子を見ていた。
「頼む!!彼女をどうにかしてくれ!!確かお前の能力の中には再生を止める力があっただろう!?」
そしてざわつく海軍の中から、幹部のような人がローの元へ駆け寄ってきた。
彼女を止めてくれれば、破談のことはなかったことにしてやると言ってくる彼の顔には身に覚えがない。
再生と止める能力とは、ラジオナイフのことだろうか。
好き勝手話してくるこの男には不快感しか覚えなかった。
何の権限があってローに命令してくるのか。
「早く彼女を殺してくれ!!」
そしてその言葉に、ローの眉間に刻まれていたシワがさらに深まると、一切の表情が消えた。