第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
そして日にちだけが無情にも過ぎていく。
ユーリの存在は政府にとって大きな誤算だった。
フレバンスに近づくどころか兵を失うばかりで、彼らは焦りを募らせていた。
他の国から侵入を試みても、彼女の姿はフラリと現れる。
それはまるで亡霊のようだ。
次第に海軍の中で、怯えて逃げるものが現れ始めた。
「私の国も、シュライヤのお陰で国民の避難は終わったんだけど、今は見る影もないわね」
それはギルベルトの国にも言えることで、フレバンスを囲んでいる3国は、彼女の手によって無残な姿に成り果てていた。
もちろんそれをユーリのせいだと、責めることはしなかった。
それよりも、彼女の心配していた。
彼女はきっと、心の奥底で泣いている。
そんな彼女を、誰が責められようか。
「政府は躍起になったのか、悪魔の実の能力者を集めて、今はギルベルトの国でユーリと争っているわ」
それが始まったのが昨日。
その場にはギルベルトもいる。
彼の情報だと、ユーリはまだ生きているようだった。
しかしそれは本当に生きていると言っていいのだろうか。
血まみれの彼女の身体は最早死体で、それを操っているだけなのかもしれない。
「……っ!」
ローは息を呑むと、鬼哭を手に取り医院を後にした。
背後で驚いたようなラミアの声が聞こえたが、そんなのはどうでもよかった。
(おれを置いて死ぬなんて、そんなの許すわけねぇだろうが!!)
ローは能力を発動させると、その場から消えた。
彼女にあげたペンダントが、ローに必死で訴えかけてくる。
向かうのは争いの中心であるアスガルド帝国。
愛するユーリの元だった。