第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「あら、国王様と王妃様ではありませんか。大したものはありませんが、どうぞ見ていってください」
ユーリとローが店に近づくと、人のよさそうな婦人が雑貨を販売していた。
ユーリは興味津々で雑貨を見ており、ローはその後ろで彼女の様子を見ていた。
因みにユーリは王妃様と言われるのはあまり好まないので、名前で呼んでくれと言われるたびに頼んでいるとか。
それはローも同じく思っているのだが、いちいち言うのが面倒なのか特に何も言ってなかった。
「何か欲しいもんでもあるのか?」
珍しくユーリが長いこと雑貨を見ているので、思わずローはそう尋ねた。
普段は物欲よりも食欲の方が勝っているのですぐに飽きるだろうと思っていたが、どうやら違うようだった。
「ん?うーん、ちょっと懐かしいものを見つけて…」
そう言うユーリの手には、以前ユーリがローに渡したことのある虹色の紐があった。
確か奇跡を起こすと言われている品物で、人気の高いものだったような気がする。
「その紐はある町でとても人気のある商品みたいで、この前偶然手に入ったんですよ」
ユーリが暫くその紐を眺めていると、婦人がそう教えてくれた。
ローはその紐を見て、少し過去の出来事を思い出していた。
「……それを1つくれ」
そしてローは暫く物思いに耽っていたが、徐にユーリからその紐を取るとさっさと買ってしまった。
婦人は国王なので代金はいいですと言っていたが、そんなことはしなくていいと断った。
「……ほら」
ローは不思議そうな表情のユーリを連れて店から離れると、その手を取って紐を結んでやった。
「え!いいの?」
案の定ユーリは驚いたが、ローからの贈り物は珍しかったのでとても喜んでいた。
特に理由があって買ったわけではないが、なんとなくユーリが欲しそうな気がしたのだ。
「嬉しい!ありがとう!」
ユーリは笑顔でローにお礼を言った。
そして嬉しそうに虹色の紐を見ている彼女に、ローの表情も自然と緩んでいった。