第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「え?」
いきなりローの上に乗せられたユーリはキョトンとしていた。
「ほら、跡を残したいんなら好きにしていいぞ」
そう言ってローは腰の上あたりに座っているユーリの首の後ろに手を回すと、ゆっくりと引きその上体を倒した。
そしてローの首元までユーリの顔を持ってくると、その手を離しユーリの様子を伺った。
「ちょ、まじで?むりむりむり」
ユーリは慌てて身体を起こそうとしたが、再びローの手によって抑え込まれそれは叶わなかった。
「やらねェならおれの好きにするが?因みに手加減はしねェ」
何やら不穏な言葉が聞こえてきたので、ユーリは慌ててローの首元に唇を寄せた。
そして少し迷っていたが、もうどうにでもなれと思ったのか再び吸い上げた。
「……んっ」
本人は一生懸命吸っているのだが、まったく跡が付く気配がない。
付いたとしても微かに赤くなるくらいで、これではすぐに消えるだろう。
ローはそんなユーリを見ていたが、暫くするとその身体に手を這わせた。
「あっ…!…ちょ、触るの禁止っ」
ユーリは今一生懸命やってるから邪魔するなとローの手を止めたが、そんなユーリを言うことを聞くようなローなら苦労はしない。
悪戯に身体に這わせる手を止めれず、ユーリは息を荒げた。
「ほら、折角主導権をやったのにもう放棄するのか?」
完全に動きを止めたユーリに、ローは実に楽しそうに挑発した。
元々ユーリが主導権を握れるとも思っていないし、握らせる気もなかったのだろう。
(…コノヤロウ)
しかしそんなローの挑発は、ユーリの中に火をつけたようだ。
ユーリは再び上体を倒すと、自らローに深い口づけを送った。
ローがやっていたように舌を差し込み絡める。
そんなユーリにローもまだまだ余裕な表情で、控えめに差し込まれた舌に自ら絡めて吸い上げた。
「ふっ……んん!?」
ユーリも負けじと対抗するが、早々に息が上がってきた。
しかしいつの間にか後頭部に手を回されて固定されているので、離れようにも離れることができない。
こうなればやけくそだと、ユーリはそれはもう必死にローの口内を荒らしてやった。