第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
シュライヤの話にローは動揺したが、今はユーリの治療が先だと言われシュライヤの船に案内された。
「おまえの船ほど設備は充実してないが、ないよりましだろ」
シュライヤから案内された医務室を軽く見渡すと、ローは十分だと言ってユーリを寝台に乗せた。
流石に手術台まではなかったが、それなりに大きな船で医療品も揃っていたのでこれならなんとかなりそうだった。
ローはシュライヤにハートの海賊団の連絡先を渡すと、近くに呼ぶように伝えさっさと扉を閉めた。
シュライヤは自分で電話しろよと愚痴ったが、今の彼にはそんな余裕はなさそうだったので仕方なく従った。
ローはユーリの血まみれの服を脱がすと、ボロボロの身体に思わず手を止めてしまった。
本当に彼女は生きているのだろうか?
湧き上がる不安が消えることがなかったが、ローは軽く頭を振るとユーリの治療に取り掛かった。
「……死ぬな、頼む……おれを置いていくな……」
小さく響き渡る声は微かに震えていた。
ローは何度もユーリに呼びかけながら、できる限りの治療を施した。
今のローにできるのは、それだけしかなかった。
伝えたいことも、謝りたいこともたくさんある。
ローはユーリを失う恐怖から手が震えていたが、必死に治療を続けていった。